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【詳説】国益適合要件

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■ここでは、永住ビザの『国益適合要件』について、更に詳しく解説していきます。

 ※この要件は内容がわかりにくいため、詳細を十分に理解せずに不許可理由となるケースが非常に多いため、しっかり確認していきましょう。

 


 

【ア】 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。

    ※ただし,この期間のうち,就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

【イ】 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税義務等公的義務を履行していること。

【ウ】 現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。

【エ】 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

 


 

上記のうち【ア】ついては『各論:国益適合要件で確認していますので、

ここでは【イ】以降についてみていきます。

 

先に【ウ】の条件について軽く触れておきしましょう。

現行法上の最長の在留期間は「5年」ですが、実務運用上は、「3年」でも当該条件を満たすものとして取り扱われています。

 

日本を生活の本拠とした継続的・安定的在留実績そのものが、直接的・間接的に日本国の発展に寄与するものであるといった考え方が、

上記【ア】【ウ】の両条件に通底しているものと思われます。

 


 

 

それでは、続いて【イ】について確認していきます。

永住許可のためには、この【イ】の他にも原則として素行善良要件をクリアする必要があります。

 

しかし、上記【イ】でも、前科の有無や納税義務等、素行善良要件と同じような条件が課されています。

すなわち、犯罪歴等の前科前歴については、素行善良要件のみならず、この国益適合要件でも審査されているのです。

まずはこの点をしっかりと押さえてください。

 

特に、日本人の配偶者や永住者の配偶者等に対しては素行善良要件が条文上免除されていますが、

この国益適合要件は日本人の配偶者等であっても課されているため、

たとえば申請人に前科前歴がある場合や、税金の未納・滞納、収入の未申告等の公的義務違反経歴がある場合は、

仮に素行善良要件免除対象者であってもこの国益適合要件を満たさないとして不許可になる可能性があるため油断は禁物です。

 

実際の審査でも、

国民健康保険等の保険料について未納・滞納経歴があることや、

その他納税義務等公的義務の履行状況が良好でない(延納・未申告・継続的な収入低調等含む)ことを理由のひとつとして、

不許可処分がなされる事例が見受けられます。

 

上述のとおり、当該要件は、文言上も実務上も具体的な意味内容が必ずしも明確ではないため、

決して曖昧なままにせず、上記ガイドラインをさらに敷衍(ふえん)し、

これまでの在留状況等を総合的・多角的に吟味することが極めて重要なのです。

 

※なお、当該要件については、その証明を申請者側が課されていないこと等を理由に、

例外的に日本国の利益を害する者に対しては永住許可をしないという、消極要件ないし阻却(そきゃく)要件と解釈すべきとの見解もあります。

(参照:児玉晃一・関聡介・難波満編著『コンメンタール出入国管理及び難民認定法』)

 

しかし、昨今の審査動向を鑑みると、むしろ積極的に疎明資料を任意提出もしくは追完等することで、

前向きに審査が進むよう働きかける姿勢が、実務の現場では有効であると思料します。

この点について実際に当社では具体的な対策を個別にご提案しておりますので、着実に永住許可を目指したいという方は、ぜひご相談ください。

 


 

 

なお上記【ア】の条件については、「原則」と前置きされているように、

10年以上・5年以上といったいわゆる居住要件に関しては、例外(特例)」が設けられています。

 


 

【居住10年要件の例外(特例)

 

それでは、次はこの【特例】について以下に解説していきます。

この特例について、永住許可に関するガイドラインでは下記のように7通りの条件が列挙されています。

 


 

(1)日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること

(2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること

(3)難民の認定を受けた者の場合,認定後5年以上継続して本邦に在留していること

(4)外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で,5年以上本邦に在留していること

 ※「我が国への貢献」に関するガイドラインを参照して下さい。

(5)地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い,当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合,3年以上継続して本邦に在留していること

(6)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア  「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ  3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令
 に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。

(7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア  「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ  1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令
 に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。

 


 

 

上記のうち(1)がもっともオーソドックスなケースで、日本人・永住者の配偶者(夫・妻)及びその実子等の場合は、

条件つきでわずか1年以上の日本在留実績で永住が認められるという規定です。

(そのため、「簡易永住許可」といわれることもあります。)

 

たとえば、外国人男性が日本人女性と海外で結婚し、2年間海外で婚姻生活を続けた後に来日した場合、

通常は来日後10年以上の在留実績を要するところ、1年以上の継続在留で足りるということです。

 

ただし、ここで注意したいのが実体を伴った』婚姻生活が必要であるという点です。

上記のとおり、日本人等の配偶者の場合、最短1年の在留実績で永住許可されることから、

形式面のみ夫婦関係を保ち、永住許可後、すぐに離婚してしまうケースも残念ながらあるようです。

ですから、戸籍上は夫婦でも、実際は長期間別居していたり、夫婦関係が破綻しているような場合は、

実体を伴っていないとされ、この特例が適用されないこともありえます。

 

そもそも、この特例規定の趣旨は、日本人等の配偶者や実子は、もともと日本国内に生活の本拠を有していることから、

家族単位で安定した生活を営むことができるようにするのが相当であるとの点にあるとされています(既出逐条解説参照)

その趣旨から考えると、ちゃんと夫婦として真正に成立しており、夫婦そろって日本に生活基盤を有している必要があるというのは当然なことです。

 

また、上記(2)にあるように「定住者」に対しても一定の緩和措置がとられていますが、

これも趣旨としては前記(1)と共通するものと考えていいでしょう。

日本との結びつきがもとから強いわけなので、永住許可のハードルも少しさげてあげましょう、ということですね。

 

なお、(3)の趣旨については、難民救済という国際的な要請や日本における法的地位の早期安定化があると考えられます。

 


 

 

以上、ここまでは国益適合要件(居住要件)の特例のうち、(1)~(3)までを見てきましたが、

続く(4)~(7)は少しその毛色が異なるようです。

 

試みに、(4)を瞥見してみましょう。

「外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者」は、わずか5年の在留実績で永住許可を認められています。

つまり、日本の発展のために活躍してくれた外国人は、通常よりも早く永住を許可してあげるよ、という規定です。

 

 

それでは、続いて以下に(6)(7)をピックアップしてみます。

この項目は平成29年4月26日にガイドラインが改定されたことにより新たに盛り込まれました。

 


 

(6)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア  「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ  3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令
 に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。

(7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア  「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ  1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令
 に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。

 


 

高度人材外国人とは、いったんどんな外国人を指すのでしょうか。

 

 

■高度人材外国人とは

「国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材」であり,

「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」とされています。

(首相官邸高度人材受入推進会議平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書

 

なんだか少し難しくなってしまいましたが、ごく簡単にいえば、

日本がグローバル競争に勝ち残っていくために、ぜひとも日本の労働市場で活躍してほしい、

日本人とは異なるバックグラウンドやセンス・発想力を持つ優れた外国人、とでもなるでしょうか。

 

日本ではこの高度外国人材の受入れを促進するため、

高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度を平成24年5月7日より導入しています。

 

具体的には、高度外国人材の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類し、

それぞれの特性に応じて「学歴」・「職歴」・「年収」などの項目ごとにポイントを設け、

ポイントの合計が一定点数(70点)※に達した場合に『高度専門職』という在留資格を与え、在留上いくつかのアドバンテージを認めています。

※ポイントの詳細については法務省令出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令で定められていますが、

これだけだと非常に計算しづらいので、審査実務上は項目と点数をまとめたポイント表が活用されています。

 

 

前出の報告書によると、

「優秀な人材、トップ人材が日本に来たい、日本で働きたいと思える魅力ある国・環境を創っていくと同時に、高度人材を呼び込む制度的なインセンティブ付けが検討されるべきである。」

とされています。

 

★優秀な外国人を呼び込むために用意したそのインセンティブこそ、最短、たった1の在留で永住権取得を可能とする上記特例なのです。

 

実際に同ガイドライン改定当時は、我こそはっ!と非常に盛り上がり、問い合わせが殺到しました。

(しかし、海外から新たに呼び込むことを想定している「ア」より、むしろ既に日本に何年間か在留している「イ」に該当する人たちの反応の方が大きかったように感じますが…)

 

 

政府はこの新〔特例〕を『日本版高度外国人材グリーンカード』と名付け、

高度 IT 人材など、我が国経済の成長への貢献が期待される高度な技術・知識を持った外国人材を我が国に惹きつけ、長期にわたり活躍してもらうための起爆剤にしようとしています。

 

<特別高度人材制度に関する永住申請の際の優遇措置について>

 

2023年4月から、このいわゆる”高度人材”を対象とした新制度、「特別高度人材制度(J-Skip)」の運用が開始されました。

この新制度は一体どのようなものなのか見ていきます。

 

上記の高度専門職要件を満たす方を対象とした条件は、いわゆるポイント計算をして、規定のポイントをクリアしているかどうかが重要でした。

しかし、この「J-Skip」は、ポイントを満たしているかではなく、学歴や職歴+年収に注目した運用となっています。

 

※対象となる人材の従事する業務の分野は、「高度専門職」の3類型のうちのいずれかに該当する必要があります。

 

(1)高度学術研究活動、高度専門・技術活動のいずれかに該当する方

 ・修士号以上の学歴+年収2000万円以上

 ・(従事する業務に関する)実務経験10年以上+年収2000万円以上

 のどちらかの条件を満たせば、特別高度人材として認定されます。

 

(2)高度経営・管理活動に該当する方

 ・(経営・管理活動に関する)実務経験5年以上+年収4000万円以上

 

そして、「特別高度人材」として認められれば、高度専門職(ポイント80点以上)の方と同様、最短1年で永住申請をすることが可能となります。

 

 

 

 

2024.11.10 Sunday